1 改正の目的・概要
消費者契約法は、事業者の不当な勧誘等による契約の取消しや不当な条項を無効とすること等により、消費者保護を図っていますが、コロナ禍によるオンライン取引の急増や成人年齢引き下げ等に伴い、これらの変化に対応すべく、主に以下の点に関する改正が行われ、令和5年6月1日より施行されました。
①契約の取消権の追加
②解約料の説明の努力義務化
③免責の範囲が不明確な条項の無効化
④事業者の努力義務の拡大
2 企業が取るべき対応
これらの改正に企業側も対応する必要がありますが、特に③については、契約書雛型の変更等を事前に行っておく必要がある場合があります。
新設された条文は以下のとおりです。
(消費者契約法第8条3項)
事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)又は消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項であって、当該条項において事業者、その代表者又はその使用する者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは、無効とする。
つまり、以下のような契約条項は無効と判断されてしまいます。
「法律上許される限り、当社は損害賠償責任を負わないものとする。」
従来、このような条項があれば、軽過失の場合には企業側は損害賠償責任を免責されていましたが、今回の改正により、以上のような条項では、軽過失の場合の免責すら受けられないことになります。
このような事態に対応するために、免責条項について、見直す必要があります。どのような規定にするかは契約内容により異なってきますが、先ほどの契約条項を法律上有効にするためには、例えば以下のように免責の範囲が明確になるよう変更することが考えられます。
「当社の故意又は重大な過失がある場合を除き、当社は損害賠償責任を負わないものとする。」
今回は改正法のうち、③の点に絞って解説しましたが、その他の点につきましても、企業側の努力義務の拡大等、企業内において周知するといった備えをしておく必要があるかと思います。
改正法の内容等、わからないことがあればご相談いただければと思います。
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