今回は、昨年私が行った組織再編関係のセミナーのポイントをいくつかピックアップしてご紹介いたします。
1 目的
ホールディングス化などが流行っているな、という感じで行う「何となく再編」ではなく、何のために組織再編を行うのか、という自社の目的を明確にすることが重要です。
そうしないと、時間、労力、費用をかけても結果として企業の利益が上がらないということになりかねません。
2 種類
一口に組織再編といっても以下のような色々な方法があり、各社の状況に応じていずれの方法を採るかを決定することになります。
・株式交換
・株式移転
・株式譲渡
・会社分割
・事業譲渡
・合併 など。
3 HD化のメリット、デメリット
たとえば、HD化をするとした場合、法務面からは以下のようなメリット、デメリットが考えられます。
〇経営の合理化 ⇔ 全社的利益の軽視、コストの増加
〈メリット〉
・分業体制による経営の合理化(意思決定や事業分析の迅速化、合理化)
持株会社:グループ全体の経営方針の策定
事業会社:各事業の遂行
〈デメリット〉
・全社的利益の軽視
事業会社間のライバル意識により全社的利益ではなく各事業会社の利益を優先するおそれ
ミスの隠蔽や足の引っ張り合い
コンプライアンス体制の分散
・組織の複雑化による管理コストの増加
〇労働条件の整備、士気・能力の向上 ⇔ 人材確保の困難性
〈メリット〉
・労働条件の整備、士気・能力の向上
事業会社ごとの状況に応じた適切な労働条件、評価制度の整備
役職ポストの配分によるモチベーションやスキルの向上
〈デメリット〉
・人材確保の困難性
分業・専門家されたポストにふさわしい人材の確保は簡単ではない
・労働条件の不利益変更
労働条件の整備に伴う不利益変更には合理性が必要
〇事業承継対策
事業会社の株式について遺留分などの相続問題を回避できる。
〇M&Aの促進
4 組織再編後の企業運営における法務の注意点
組織再編は一定の目的のために行われますが、前記のメリット、デメリットは、いずれも組織再編自体から生じるものというより、その後の企業運営によって生じるものといえます。そのため、前記メリットを活かし、デメリットを回避するため、以下のような企業運営上の対応が必要になります。
すなわち、結局のところ、ヒト(マネジメント)の問題ということになり、従業員レベルのマネジメント(人事・労務)、役員レベルのマネジメント(経営政策)、株主レベルのマネジメント(経営支配権)いずれも必要ということになります。
・指揮命令系統の整備
・就業規則・労働契約書の整備、修正
・内部評価制度の確立
・コンプライアンス体制の強化
・人材の確保、教育
・株主構成の対策
これからの企業における最重要資源が「人」であることは多くの方が認識されているところと思います。この「人」には、従業員、役員、株主など企業に関わる色々な立場があり、それぞれについて対応を検討する必要があります。
当事務所では、企業における労使関係、役員間の関係、株主間の関係などの組織マネジメント全般をサポートして企業の維持・発展のお手伝いをいたします。