固定残業代(みなし残業代)について

従業員の労務管理のために、固定残業代(みなし残業代)のシステムを導入し、従業員に定額の残業代をお支払いされている会社も多いかと思います。もっとも、固定残業代(みなし残業代)には法的にみて様々な問題を含んでいます。今回は、その固定残業代(みなし残業代)についてご説明いたします。

1 固定残業代の罠!?
固定残業代は、制度そのものは有効ですが、例えば次のような場合には違法となり、固定残業代の金額を割増賃金の基礎賃金に含め、その基礎賃金をもとに算出された割増賃金を支払わなければならない状況に陥ってしまう可能性があります。
①雇用契約書または労働条件通知書に固定残業代を除いた基本給の額が明示されていない場合
例えば、「月給30万円(固定残業代含む。)」という記載は、固定残業代を除いた基本給の額が明示されておらず、NGです。
②雇用契約書または労働条件通知書に記載の固定残業代に関する労働時間数と金額等の計算方法が明確でない場合
例えば、「月給30万円(基本給25万円、固定残業代5万円)」という記載は、労働時間数と金額等の計算方法が明確ではないため、NGです。
③残業時間を45時間超に設定している場合
36協定で法定労働時間を超えて延長できる1ヶ月の残業時間数の上限は45時間までと定められています。
④固定残業時間の超過部分について残業代が支払われていない場合
実労働時間が固定残業時間を超えても、固定残業代によって超過分の残業代の支払義務がないというわけではありません。残業時間の超過部分については残業代を別途支払わなければ違法となるおそれがあります。
⑤休日、深夜の割増賃金率を適用していない場合
時間外労働の割増賃金率は25%ですが、休日労働では35%となり、時間外かつ深夜労働では50%の割増賃金率となります。

2 事前の対処のために
上の例では、「月給30万円(基本給25万円、固定残業代5万円)ただし、1時間当たりの基礎賃金を2000円、割増賃金率を25%として、固定残業時間20時間分の残業代を計算し、20時間を超える時間外労働分についての割増賃金は追加で支給」等と基本給と固定残業代の内訳を明確に記載する必要があります。
就業規則に固定残業代の規定があったとしても、上のような場合に該当する会社は一度固定残業代の制度自体を見直す必要があることもあります。
会社ごとにその制度は異なるかと思いますので、この記事を読まれて、うちの会社は大丈夫だろうかと思われた方は一度弁護士までご相談ください。